(2023年12月31日改訂版)
確定申告の時期が始まりました。
企業の確定申告は、各事業年度終了後2か月以内ですが、個人の方の確定申告は、申告する税の種類によって決まっています。
個人の方の所得税は、1月1日から12月31日までの所得について翌年の2月16日から3月15日まで、相続税は相続の開始があったことを知ってから10か月以内、贈与税は贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までです。
個人の方の所得税は、サラリーマンであれば毎月のお給料から源泉徴収されていますが、年末に会社で控除等の調整をしていただきますので、確定申告する必要はほとんどありませんね。
ただ、次のような場合は確定申告する必要があります(あるいは、したほうがよいです)。
①初めて住宅ローンを組んだ時(2年目から年末調整されます)
②医療費控除をしたい時(年末調整されません)
③副業の所得が20万円を超えた
④ふるさと納税したがワンストップ特例していなかった、もしく5自治体をこえてふるさと納税した
⑤株取引で特定口座にしていなかった
⑥株取引で損をした
⑦FX取引をしてた
⑧不動産を売却した
⑨年末調整の時、出し忘れた書類があった
⑩給与が2000万円を超えた(年末調整されません)等々、他にも細かいのがありますが、多いのがこのようなものでしょうか。
今日は、この中で⑤⑥⑦の株やFXに関する申告について書いてみます。最近、テレワークが多くなって、時間が出来た、でも残業代が減った、給与が増えないなどなどにより、株取引やFXを始めた人も多いかと思います。でもいくつか注意しなければならないことがあるのです。
株取引と申告
上場株式の取引をするには証券会社等を経由することがほとんどですが、その際に、特定口座か一般口座のどちらかを選んだと思います。(NISA口座は非課税口座なので、ここでは除外します。)
特定口座
この口座を選択すると、証券会社等がその口座の損益等を計算し、年間取引報告書を作成していただける制度です。
特定口座には、①源泉徴収ありと、②源泉徴収なしの2つの口座に分かれています。
①の源泉徴収ありを選択している場合には、すでに税金が徴収されていますので、確定申告の必要はありません。ただ、他の証券会社等にも特定口座をもっているとか、譲渡損が発生した場合には、確定申告することにより、損益通算や譲渡損の繰越控除をすることができます。
②の源泉徴収なしを選択している場合には、確定申告しなければなりませんが、証券会社等が発行する年間取引報告書を提出することにより、簡単に確定申告はできます。
一般口座
この場合には、証券会社等は何もしてくれないので、自分で譲渡損益等を計算して確定申告しなければなりません。
上場株式取引で損が生じた場合
上場株式等の取引により発生した損失は、「上場株式等の譲渡損失の繰越控除」として、最長3年間、翌年以後の上場株式等の譲渡益から控除することができます。また、「上場株式等の配当所得」との損益通算も可能です。この場合には確定申告する必要があります。
たとえば、2021年度に損失が発生した場合に確定申告しておくと、2022年度に利益が出れば2021年度の損失と相殺するとにより、税金を払う金額を減らすことができるのです。2022年度の利益を使ってもまだ損失が残っている場合には、最長3年間、つまり2024年度まで繰り越すことができます。(ただし、注意すべきことがあるので、下の、「上場株式取引と国民健康保険料等」は読んでおいてくださいね。)
FX取引と申告
FXでの利益は、株式のように証券会社等で源泉徴収する仕組みがありませんので、自分で計算して確定申告する必要があります。ちょっと前までには、FX取引で大もうけした主婦に税務署の調査が入って、大変な金額を追徴されたということもありましたから、注意してくださいね。ただ、利益が20万円以下の方は申告しなくても大丈夫です。
FX取引で損をした場合にも、上場株式のように損失の繰越控除の制度がありますから、この場合にも確定申告したほうがいいですね。
FX取引は上場株式とは損益通算できませんから注意してください。FX取引は、「先物取引に係る雑所得等」としてほかの所得とは区別されているからです。(ただ、あまりいないと思いますが、先物商品取引等とは損益通算できます。)
上場株式取引と国民健康保険料等
税務署に確定決算すると、自動的に自分の住んでいる自治体にも書類が回りますので、なにもしなくても勝手に住民税が計算されます。また、その情報をもとに、自営業や無職の方の国民健康保険料や65歳以上の介護保険料等が計算されます。
したがって、株取引で確定申告した場合には、その株取引の利益が保険料にも加算されてしまうということです。特定口座の源泉徴収ありを選択した場合には、確定申告しませんので、その利益は保険料等には一切反映しません。
たとえば、繰越控除を使うために確定申告した場合に、損益が相殺されて0になっている場合はいいのですが、利益が残る場合にはその分保険料が上がる可能性があります。
たとえば、昨年度50万円の損をしたので繰越控除させた。今年度80万円の利益が生じたので、昨年度の50万円と相殺させて、今年度は30万円の利益として申告したような場合です。この場合には、50万円分にかかる所得税は節約できますが、国民健康保険料の計算の時に全所得に30万円分加算されてしまうのです。
ただ、これを少しでも防ぐ方法があり、住民税の申告をして、所得税と異なる課税方式を選択することでした。しかしこの方法は2024年からできなくなりましたから、注意してください。住民税の申告方法は、所得税の申告方法と同じになってしまったのです。
ただし、サラリーマンの方は、健康保険料については会社の給与の金額だけで決まりますので、ここはご安心ください。
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